東京地方裁判所 昭和44年(特わ)77号 判決 1969年9月04日
本籍
東京都台東区小島一丁目三番地
住居
東京都台東区小島一丁目一一番七号
会社役員
日馬由二郎
大正五年四月二一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官上田政夫・弁護人出射義夫・江川洋出席の上審理して、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役八月及び罰金一、八〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都台東区小島一丁目一一番七号に店舗を設け日馬鎖製作所の名称で鎖及び貴金属装身具の製造販売業を営み、右事業による事業所得を得ていたほか、自己所有株式の配当による配当所得、大学債等の利息収入による雑所得等を得ていたものであるが、自己の所得税を免れる目的で、右事業所得の売上の一部を除外して薄外預金・貸付信託を蓄積し、あるいは期末たな卸商品の一部を除外する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和四〇年分の実際課税所得金額が六一、六〇八、四〇〇円で、これに対する所得税額が三七、〇八二、〇〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四一年三月一日東京都台東区浅草蔵前二丁目八番一二号所在の所轄浅草税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が五、四二四、七〇〇円で、これに対する所得税額が一、八七〇、二五〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて右年分の正規の所得税額と右申告税額との差額三五、二一一、七五〇円を法定の納付期限までに納付しないでこれを免れ
第二、昭和四一年分の実際課税所得金額が四三、一〇二、八〇〇円で、これに対する所得税額が二四、〇八三、一九〇円であつたのにかかわらず、昭和四二年三月七日前記浅草税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が五、二八〇、四〇〇円で、これに対する所得税額が一、七五六、五五〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて右年分の正規の所得税額と右申告税額との差額二二、三二六、六四〇円を法定の納付期限までに納付しないでこれを免れ
第三、昭和四二分の実際課税所得金額が三五、〇九八、〇〇〇円で、これに対する所得税額が一八、八五五、三〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四三年三月一四日前記浅草税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が五、五三四、〇〇〇円で、これに対する所得税額が一、八五五、五〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて右年分の正規の所得税額と右申告税額との差額一六、九九九、八〇〇円を法定の納付期限までに納付しないでこれを免れ
たものである。
(各年分の所得の確定内容は別紙第一、第二、第三の各修正貸借対照表の、税額の計算は別紙第四の税額計算書の各記載のとおりである。)
(証拠の標目)
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書九通及び検察官に対する供述調書三通
一、被告人の上申書二通
一、植村博子、植村猛、日馬京子、相京溥士の検察官に対する各供述書
一、大蔵事務官上川路正一作成の各銀行調査書(定期預金、普通預金、通知預金、貸付信託、指定金銭信託、定期積金、貸付信託収益配当金、指定金銭信託収益配当金、受取利息、補てん備金)
一、大蔵事務官松尾敏章作成の各調査書(減価償却費等、前受利子割引料について、不動産所得について)
一、大蔵事務官遠藤昭三作成の各調査書(申告所得税の納付状況について、不動産取得税・固定資産税の納付状況、電信電話債券の受取利息について)
一、大蔵事務官馬場良一作成の各調査書(借入金、小口店売脱漏のうち小切手の受入等について、勘定別内訳明細書)
一、大蔵事務官小村晋作成の調査事績報告書二通
一、浅草税務署長山本栄吉作成の証明書
一、昭和四〇年分所得税確定申告書一枚(昭和四四年押第五四六号の1)
一、昭和四一年分の所得税確定申告書一枚(前同号の2)
一、昭和四二年分の所得税確定申告書一枚(前同号の3)
一、青色申告者書類つづり一綴(前同号の4)
(法令の適用)
各事実につき、所得税法二三八条(懲役刑と罰金刑を併科)。
併合罪加重につき、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項。
換刑処分につき、刑法一八条。
刑の執行猶予につき、刑法二五条一項。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 小島建彦)
別表第一
修正貸借対照表
日馬由二郎
昭和40年12月31日
<省略>
<省略>
<省略>
別紙第二
修正貸借対照表
日馬由二郎
昭和41年12月31日
<省略>
<省略>
<省略>
別紙第三
修正貸借対照表
日馬由二郎
昭和42年12月31日
<省略>
<省略>
<省略>
別紙第四
税額計算書
<省略>